Amazon DocumentDBがついに割引対象へ!Database Savings Plansで実現する大幅コスト削減

メディア統括本部 サービスリライアビリティグループ(SRG)の小林(@berlinbytes)です。
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この記事は、CyberAgent Group SRE Advent Calendar 2025 13日目の記事です。
 
先日の AWS re:Invent 2025 で発表された「Database Savings Plans for AWS Databases」により、ついに Amazon DocumentDB も Savings Plans の対象になりました! これまで Aurora や RDS などに比べて「DocumentDB だけ割引オプションが弱い…」と感じていた方にとっては、かなり嬉しいアップデートだと思います。 我々にとっても待ちに待った、喜ばしいニュースでした。
 
 
この記事では、Database Savings Plans の概要、公式ドキュメントにある Amazon DocumentDB の料金例を用いた割引イメージ、そして東京リージョンでの本番運用を想定した構成での簡易試算についてまとめます。
なお、本記事の金額はすべて USD ベースの試算です。実際の単価や為替レートについては、必ず AWS 公式料金ページで最新情報を確認してください。
 

Database Savings Plans とは


まずは今回の主役である Database Savings Plans について解説します。 Database Savings Plans は、一言で言えば「データベースサービス専用の Savings Plans」です。 Compute Savings Plans などと同様に、1年間の一定額の利用(ドル/時間)をコミットすることで、オンデマンド料金から割引が適用される仕組みです。 主な特徴は以下の通りです。
  • 契約期間は 1年間(現時点では 1年のみ提供)
  • コミットした利用額分について、オンデマンド料金から自動的に割引
  • 対象サービスは Aurora、RDS、DynamoDB、ElastiCache、Amazon DocumentDB、Neptune、Keyspaces、Timestream、DMS など多岐にわたる
  • インスタンスファミリー、サイズ、リージョン、データベースエンジンをまたいで適用可能
  • Database RI や DynamoDB のリザーブドキャパシティとは、同じ利用分に対して重ね掛け不可
割引率の目安(上限)は、公式の説明によると以下のようになっています。
  • サーバーレス系: 最大 35% オフ
  • プロビジョンドインスタンス(Aurora、RDS、DocumentDB など): 最大 20% オフ
今回の重要なポイントは、「Amazon DocumentDB インスタンス」および「Amazon DocumentDB Serverless」がこの対象に含まれていることです。 これにより、柔軟性を維持しながらコスト最適化を図ることが可能になりました。
 

Amazon DocumentDB の料金モデル


次に、DocumentDB の料金体系を整理しておきます。 Amazon DocumentDB (with MongoDB compatibility) の料金は、主に以下の 4 つの要素で構成されています。
  1. オンデマンドインスタンス
      • クラスターのコンピューティングインスタンス(インスタンスクラス × 台数)
  1. データベース I/O
      • ストレージボリュームへの読み書き I/O(100 万 I/O 単位)
  1. データベースストレージ
      • クラスターストレージボリュームの容量(GB / 月)
  1. バックアップストレージ
      • データ量を超えたバックアップの利用量(GB / 月)
さらに、ストレージ構成として次の 2 パターンが選べます。
  • Standard(従量課金 I/O 構成)
    • インスタンス + ストレージ + I/O + バックアップの 4 つで課金
    • I/O がクラスター全体コストの 25% 未満 になりそうならこちらが向いている
  • I/O-Optimized(I/O 込み構成)
    • インスタンス + ストレージ + バックアップの 3 つで課金(I/O 無料)
    • I/O がクラスター全体コストの 25% 超 になりそうならこちらが向いている
今回のテーマである Database Savings Plans は、このうち「オンデマンドインスタンス」の料金(または Serverless の DCU)に対して割引を適用します。 ストレージや I/O の料金は割引対象外である点に注意が必要です。

公式ドキュメントの料金例(Standard 構成)での試算


まずは AWS 公式の DocumentDB 料金ページにある例に近い構成にて、Standard 構成でのコスト削減効果を見てみます。
 
 

US East (N. Virginia) / db.r8g.large ×2

公式ドキュメントの Example 1(Standard 構成)ではr5インスタンスでの構成ですが、Savings Plansの対象になるようにr8gインスタンスで試算を行ってみます。
  • リージョン: US East (N. Virginia)
  • インスタンスクラス: db.r8g.large
  • インスタンス台数: 2 台(Primary 1 台 + Replica 1 台)
  • ストレージ: 50 GB
  • バックアップストレージ: 50 GB
  • I/O: 200M(2 億)I/Os / 月
この構成における月額コストは以下の通りです。
  • インスタンスコスト: 0.304 USD × 730 時間 × 2 台 = 443.84 USD
  • ストレージコスト: 50 GB × 0.10 USD = 5.00 USD
  • I/O コスト: 200M × 0.20 USD = 40.00 USD
合計: 443.84 + 5.00 + 40.00 = 488.84 USD / 月

Database Savings Plans 適用後のイメージ

この構成に対して、Database Savings Plans を適用し、インスタンス部分に割引が効いた状態で試算します。
  • インスタンスコスト(割引後): 0.243 USD × 730 時間 × 2 台 = 354.78 USD
  • ストレージコスト: 5.00 USD(変更なし)
  • I/O コスト: 40.00 USD(変更なし)
合計: 354.78 + 5.00 + 40.00 = 399.78 USD / 月
このケースにおける削減額と削減率は以下の通りです。
  • 削減額: 488.84 USD - 399.78 USD = 89.06 USD / 月
  • 削減率: 約 18%
削減額は約 89.06 USD となり、クラスター全体で見ると約 18% の削減となります。 インスタンス部分の割引が全体のコスト削減に大きく寄与していることがわかります。

東京リージョン / db.r8g.8xlarge ×3 台構成(I/O-Optimized 構成)での試算


続いて、より実践的な本番ワークロードを想定した試算を行います。 ここでは、最新の Graviton4 プロセッサを搭載したインスタンスを使用し、I/O 課金のない I/O-Optimized 構成を選択した場合で試算します。

ap-northeast-1(Tokyo)/ db.r8g.8xlarge ×3

  • リージョン: ap-northeast-1 (東京)
  • インスタンスクラス: db.r8g.8xlarge
  • インスタンス台数: 3 台(Primary 1 台 + Replica 2 台)
  • ストレージ: 1 TB
  • バックアップストレージ: 1 TB
この構成における月額コストは以下の通りです。
  • インスタンスコスト: 5.863 USD × 730 時間 × 3 台 = 12,839.97 USD
  • ストレージコスト: 1,000 GB × 0.30 USD = 300.00 USD
  • バックアップコスト: 1,000 GB × 0.02 USD = 20.00 USD
合計: 12,839.97 + 300 + 20 = 13,159.97 USD / 月

Database Savings Plans 適用時の月額

次に、Database Savings Plans 適用後のコストを算出します。 割引はインスタンス部分のみに適用されます。
  • インスタンスコスト(割引後): 4.690 USD × 730 時間 × 3 台 = 10,271.1 USD
  • ストレージコスト: 300.00 USD(変更なし)
  • バックアップコスト: 20.00 USD(変更なし)
合計: 10,271.10 + 300 + 20 = 10,591.10 USD / 月
このケースにおける削減額と削減率は以下の通りです。
  • 削減額: 13,159.97 USD - 10,591.10 USD = 2,568.87 USD / 月
  • 削減率: 約 19.5%
I/O-Optimized 構成では、I/O 料金が発生しない代わりにインスタンス単価が高く設定されています。 そのため、クラスター全体のコストに占めるインスタンス料金の割合が非常に高くなります。 結果として、インスタンス部分への 20% の割引がクラスター全体に対してもほぼそのまま反映され、約 19.5% という高い削減率を実現できることがわかります。
このように、I/O-Optimized 構成と Database Savings Plans は非常に相性が良い組み合わせと言えます。

Database Savings Plans 導入検討のステップ


実際に DocumentDB を含めた Database Savings Plans の購入を検討する際は、以下のステップで進めることをおすすめします。
  1. オンデマンドコストを把握する 既存のクラスターであれば Cost Explorer や請求書から DocumentDB のオンデマンド利用額を集計します。 新規構築の場合は、AWS Pricing Calculator を使用して見積もりを作成します。
  1. 適用範囲を決定する DocumentDB だけでなく、Aurora、RDS、ElastiCache、DynamoDB など、他のデータベースサービスもまとめて Savings Plans の対象にするかどうかを検討します。 Database Savings Plans はエンジンやリージョンをまたいで適用できるため、将来的にデータベースの移行や構成変更の可能性がある場合でも柔軟に対応できます。
  1. 推奨値を確認する AWS Billing and Cost Management コンソールの「Savings Plans の推奨事項」を確認します。 過去の利用実績に基づき、最適なコミット額($/時間)の候補が提示されます。
  1. Reserved Instances (RI) との使い分け 「今後 3 年間は構成を変えずに使い続ける RDS」であれば割引率の高い RI を適用し、 「将来的に構成変更や移行の可能性がある DocumentDB や Aurora」には柔軟性の高い Savings Plans を適用するなど、ワークロードの特性に合わせて使い分けるのが効果的です。

まとめ


re:Invent 2025 で発表された Database Savings Plans により、Amazon DocumentDB もついに Savings Plans の恩恵を受けられるようになりました。
DocumentDB の料金構成のうち、Savings Plans で割引されるのはインスタンス部分(または Serverless の DCU)です。 Standard 構成の例では全体で約 18% の削減、インスタンス費用の比率が高い I/O-Optimized 構成の例では全体で約 20% に近い削減効果が期待できます。
特に、リージョンやインスタンスファミリー、データベースエンジンをまたいで適用できる柔軟性は、変化の激しいシステム環境において大きなメリットとなります。 現状のコストと将来の構成変更の見込みを整理し、ぜひ導入を検討してみてください。
 
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