n8nとQdrant でやるベクトル検索が簡単だった

メディア統括本部 サービスリライアビリティグループ(SRG)の長谷川(@rarirureluis)です。
#SRG(Service Reliability Group)は、主に弊社メディアサービスのインフラ周りを横断的にサポートしており、既存サービスの改善や新規立ち上げ、OSS貢献などを行っているグループです。
本記事では、ワークフロー自動化ツール n8n と ベクトル検索エンジン Qdrant を用いて「社内システム/チケット管理向けベクトル検索 PoC(Proof of Concept)」を行った結果、想像以上に簡単かつ汎用的に応用できそうだったという知見を共有します。

はじめに


社内の問い合わせ対応やチケット管理では、過去のナレッジを即座に引き出せずに時間とコストがかかることが多々あります。
今回、ベクトル検索の PoC を通じて「似たチケットの即時検索」「FAQ 自動回答」「関連ドキュメント推薦」の有効性を検証しました。
n8n + Qdrant の組み合わせにより、エンジニアだけでなくオペレーターでも扱えるワークフローを短時間で構築できることが最大の収穫でした。
筆者自身、ベクトルに関しての知見は全くありませんが AI に色々と助言をもらいながら進めました。

今回使用したツール


今回のシステムは、主に以下のツールを組み合わせて構築しました。

n8n

n8nは、様々なアプリケーションやAPIを連携させ、ワークフローを自動化するためのプラットフォームです。
ノードベースのビジュアルエディタが特徴で、プログラミングの知識が少なくても直感的に処理の流れを組み立てることができます。
400以上の連携先(インテグレーション)が用意されており、セルフホストも可能なため、柔軟かつ安全にデータを扱うことができます。

Qdrant

Qdrantは、ベクトル検索に特化したデータベースエンジンです。
AIが生成したベクトルデータ(エンベディング)を高速に検索・管理することを得意としています。
Rustで開発されており、高いパフォーマンスと信頼性を誇ります。
類似性検索だけでなく、JSON形式のペイロードをベクトルに紐づけて保存し、キーワードや数値範囲など、多彩な条件でのフィルタリングも可能です。
これにより、単なる類似検索に留まらない、複雑なビジネスロジックを実装できます。

GitHub と CSV

QAの元データとなる質問と回答のペアは、CSV(Comma-Separated Values)形式で作成しました。
CSVはカンマで値を区切ったシンプルなテキストファイルで、多くのツールで簡単に扱うことができます。
このCSVファイルは、バージョン管理や共同編集のしやすさを考慮し、GitHubのリポジトリで管理することにしました。

簡単なQAシステムの構築


システムの全体像は非常にシンプルです。
  1. QAデータをまとめたCSVファイルをGitHubにアップロードします。
  1. Qdrantの環境を構築し、コレクション(データの格納場所)を作成しておきます。
  1. n8nでワークフローを作成し、GitHubからCSVデータを取得してQdrantに投入します。
  1. ユーザーからの質問を受け付けると、n8nが質問内容をベクトル化し、Qdrantに問い合わせて類似度の高い回答を検索します。
  1. 検索結果をユーザーに返却します。
この一連の流れを、n8nのワークフローとして実装しました。
n8nのノードを繋ぎ合わせていくだけで、データの取得、加工、Qdrantへの問い合わせといった処理を簡単に自動化できました。

構築してみた結果と今後の活用


n8nとQdrantを組み合わせることで、AIを活用したQAシステムが非常に簡単に構築できることが分かりました。
この仕組みは、様々な用途に応用可能です。

Production readiness checklist などの社内レビュー

新しくサービスをローンチする際に、GitHub にチェックリストや、準拠しなければならないものを GitHub に置いといて、インプットとして Terrafrom のコードや、tfstate を与えるだけでチェックが容易に行えるようになります。

社内向けヘルプデスクの自動化

社内の情報システム部門などへの問い合わせ窓口(ヘルプデスク)としても活用できます。
「PCのセットアップ方法」や「ソフトウェアの利用申請」といった定型的な質問に対して、24時間365日、自動で回答することが可能になります。

まとめ


n8n と Qdrant を組み合わせた ベクトル検索 PoC により、社内外のチケット管理・ヘルプデスクにおける課題を手軽に解決できる手応えを得ました。
PoC で作成したワークフローはそのまま本番に流用でき、将来的には ナレッジ共有ポータルや障害分析支援ツール への展開も視野に入ります。
SRG では一緒に働く仲間を募集しています。
ご興味ありましたらぜひこちらからご連絡ください。