東京リージョンのAuroraにGraviton3(r7g)が来たぞー!簡単な性能検証結果と注意すべき点

メディア統括本部 サービスリライアビリティグループ(SRG)の鬼海雄太(@fat47)です。
#SRG(Service Reliability Group)は、主に弊社メディアサービスのインフラ周りを横断的にサポートしており、既存サービスの改善や新規立ち上げ、OSS貢献などを行っているグループです。
 
本記事は、AWSのAuroraにてGraviton3(r7g)が東京リージョンで利用可能になったことや、性能検証や利用するにあたって注意したほうがいいことを記載しています。
なにかの役に立てば幸いです。
 

ついに東京リージョンのAuroraにGraviton3(r7g)がキタ!


AuroraのGraviton3(r7g)対応自体は昨年2023年5月の時点でリリースされていました。
しかし、この時点では米国東部 (バージニア北部、オハイオ)、米国西部 (オレゴン)など一部のリージョンに限られて提供開始されていました。
 
そこから待つこと1年以上…。
突然東京リージョンでもr7gインスタンスが選択できるようになったことに気が付きました。
 
現時点(2024年9月9日)では英語版含めて正式なリリース発表はないようです。
【追記】日本時間9月10日に英語のドキュメントで発表されました。
15 additional regions, including US West (N. California), Canada (Central), South America (Sao Paulo), Europe (Stockholm), Europe (Frankfurt), Europe (London), Europe (Milan), Europe (Spain), Asia Pacific (Mumbai), Asia Pacific (Hyderabad), Asia Pacific (Seoul), Asia Pacific (Tokyo), Asia Pacific (Singapore), Asia Pacific (Sydney), and Asia Pacific (Hong Kong).

r6gとの違い


性能について

r7gが北米リージョンでリリースされたときの記事から一部引用させていただきます。
Graviton3 インスタンスは、データベースエンジン、バージョンやワークロードに応じて、Aurora の Graviton2 インスタンスと比較して、RDS オープンソースデータベースのパフォーマンスを最大 30% 向上させ、料金/パフォーマンスを最大 20% 向上させます。
 
性能が30%ほど向上する見込みがあるようです。

料金について

公式の料金表から一部抜粋させていただきます。
 
東京リージョン価格表
インスタンスタイプ時間あたり料金(オンデマンド)同スペックr6gとの料金差
db.r7g.largeUSD 0.333+6.39%
db.r7g.xlargeUSD 0.665+6.06%
db.r7g.2xlargeUSD 1.331+6.23%
db.r7g.4xlargeUSD 2.662+6.23%
Graviton2(r6g)と比べて約6%ほど料金が高いということがわかりました。

r6gとr7gでのsysbenchパフォーマンス比較検証


sysbenchでr6g.largeとr7g.largeのインスタンスで計測をおこないました。
負荷をかける側、かけられる側すべて同一AZ内となります。

負荷をかける環境の準備

インスタンスタイプ:c7a.xlarge
AMI:amazon/al2023-ami-2023.5.20240903.0-kernel-6.1-x86_64
 
sysbench用のスキーマ・テーブル作成
5テーブル作成し、テーブルごとに5万行のデータ

sysbenchの実行

一般的なReadとWriteを実行する でr6gとr7gにそれぞれ実行します。
 
それぞれのインスタンスに3回ずつ実行しました。Auroraはキャッシュクリアが難しいのでそこは考慮しておりません。
3回の平均値を以下にまとめます。
readwriteothertotaltransactionsqueries
r6g204,39558,39829,199291,99314,599 (243per sec)291,993 (4866per sec)
r7g274,10678,31639,158391,58019,579 (326per sec)391,580(6526per sec)
r6gとの差+34.1%+34.1%+34.1%+34.1%+34.1%+34.1%
今回の検証では各項目約34%の性能向上が見られました。
一例としてtransactionsの性能差をグラフ化するとこのような感じです。
 
インスタンス費用が6%増加しますが、性能が30%近く向上するのでそれによって
  • インスタンスサイズを下げられる
  • インスタンスの数を減らせる
などが可能であるかを検討いただくのがよいかなと思います。

リザーブドインスタンスの価格にご注意


とてもよさそうなGraviton3ですが、ここで注意するべきことがあります。
それはリザーブドインスタンスの割引がr6gと比べると低いという点です。
リザーブドインスタンスはインスタンス費用の一部、または全部を前払いすることで料金を割り引いて利用できる制度です。
 
現時点では東京リージョンでのr7gのリザーブドインスタンスの価格表が公式ページにも記載がありませんので、バージニア北部(us-east-1)リージョンの価格表で比較をしてみます。

算出条件

リザーブド期間: 1年
支払いオプション:全額前払い
リージョン:バージニア北部(us-east-1)
 
以下が上記条件で出てくる料金表です。
インスタンス名RI全額前払いの時間料金換算オンデマンドと比較した費用削減割合 オンデマンドの料金
db.r6g.largeUSD 0.14246%USD 0.2600
db.r6g.xlargeUSD 0.28345%USD 0.5190
db.r6g.2xlargeUSD 0.56645%USD 1.0380
db.r6g.4xlargeUSD 1.13245%USD 2.0760
db.r7g.largeUSD 0.20227%USD 0.2760
db.r7g.xlargeUSD 0.40427%USD 0.5530
db.r7g.2xlargeUSD 0.807 27%USD 1.1060
db.r7g.4xlargeUSD 1.61427%USD 2.2110
r6gのRIでの割引率が高いことがわかります。

r6g.largeとr7g.largeの料金比較結果

もう少し見やすくするため、r6g.largeとr7g.largeの料金を直接比較して、r6gと比べて何%料金があがるか算出してみました。
インスタンス名RI全額前払いの時間料金換算オンデマンド料金
r6g.largeUSD 0.142USD 0.2600
r7g.largeUSD 0.202 (+42.2%)USD 0.2760 (+6.1%)
オンデマンド料金は約6%の増額です。これは東京リージョンの料金表に出ている数字と大きな差はありませんでした。
そして、リザーブドインスタンスではr6gと比べて約42%も高額になるという結果となりました。

終わりに


Auroraで待望のGraviton3が東京リージョンでリリースされたのは嬉しいですね!AWSさんありがとうございます!
r6gからの乗り換え自体は簡単なので、性能差や価格差を考えて導入していきたいところです。
ただ、現在すでにr6gを全額前払いのリザーブドインスタンスで利用している場合は、より入念に試算していただくことをおすすめします。
 
SRG では一緒に働く仲間を募集しています。 ご興味ありましたらぜひこちらからご連絡ください。
 
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